朝日新聞学校生活のトラブル、プロがつなぎ役で解決2007年03月05日11時25分を見て、児童生徒・保護者と学校の間に入ってもらえるというのはいいですね。

以下、該当記事引用。

学校生活のトラブル、プロがつなぎ役で解決

2007年03月05日11時25分

 学校生活でのトラブルを解決するため、児童・生徒の保護者と学校との間に第三者が入って助言する仕組みが広がり始めた。当事者同士だと言いづらい問題を聞き出し、こじれるのを防ぐのも狙いだ。間に入るのは元校長ら教育関係者が多い。「プロ」の視点からのアドバイスが好評で、保護者と学校がお互いを理解するのに一役買っているようだ。

 豊かな自然が残る東京都稲城市西部の稲城第六中学校。校舎の一角に、「市立学校アドボカシー相談室」がある。アドボカシーは「権利擁護」の意味。部屋に置かれた机の周りには、プライバシーを保護するためのすりガラスの仕切りがある。

 毎週金曜日の午前中、子どもの教育について悩みを抱えた保護者らが訪ねてくる。相談に応じるのは学校長経験者2人。その1人、元小学校長の男性(61)は「話をしっかり聞くことが大切。来た時は重苦しい表情でも、帰る時はニコッとなる人もいる」と、相談の効果を指摘する。

 相談室は昨年6月に置かれた。稲城市企画部政策室の石井春男・副参事は「(保護者の間に)子どもが通っているため学校には直接言いづらいし、言っても届きにくいという声があった。2年ほど前から市立病院で始め、学校版も作ることになった」と話す。

 相談は事前に予約が必要だが、無料。寄せられた相談は昨年末までで14件あり、苦情が7件、要望・提案が6件。苦情は、担任の指導について「公平・公正さがない」「子どもへの言葉遣いをどうにかしてほしい」といった内容だ。「少人数学級をもっと実現して」との要望もあった。

 相談は原則1時間までだが、ぎりぎりまで自分の思いを話していく保護者が多い。「それだけ悩んでいるんですよ」と相談員の元小学校長。相談内容は学校側に伝え、保護者から求められれば、学校がどう対応するかまで記した回答文を保護者に渡す。

 この元校長は、保護者と学校側が直接話し合う場をできるだけ設けるようにしている。「それで両者の溝が少しずつ埋まっていくんです」

 相談員が元校長だけに、対応が学校寄りになる恐れはないのか。元小学校長は「学校側の立場ではなく、保護者の立場で聞いている」と強調する。稲城市も、窓口を教育委員会でなく企画部政策室に置くなど注意を払う。解決が難しい問題については、専門家や弁護士ら4人で作る「市アドボカシー審査会」に審査してもらうこともできる。

■学校側からも相談/相互理解へ道

 福岡市は稲城市よりひと足早く、05年8月に第三者機関「学校保護者相談室」を設けた。保護者と学校とのトラブルが長期化する例が増えてきたことが一因だった。電話相談が中心だが、面談もある。

 特徴は、保護者だけでなく学校側からの相談も受け付ける点だ。昨年7月までの1年間では、282件の相談のうち保護者からが267件を占めたが、学校からも15件あった。保護者からの相談では、「担任教師への不満」が最も多く、83件。「いじめに関すること」が32件あり、「保護者同士の対立」も11件あった。学校からでは、「保護者への対応」が10件と3分の2を占めた。

 2人いる相談員はともに女性で、元小学校長と電話相談業務の経験者だ。警察出身の補助相談員も1人いる。多い日には5〜6件の相談があり、1件に1時間以上対応することもある。元校長は「学校に直接言えば解決できるものも多いが、保護者は言えない。学校はまだ開かれていないと感じる」と話す。

 親を説得して学校に行ってもらうこともある。多くは1回の話し合いで解決するという。「親から『我慢していたが、後押ししてもらって勇気が出た』と感謝されたこともある。うれしかった」と元校長。サポート体制も充実させ、子どもがけがをした時の責任問題など法的判断が必要な場合は、弁護士に助言を求めることができる。

 福岡市には他の自治体からの視察や問い合わせが続いている。市教委学校教育課の渡利直弘課長は「学校に言えなかった保護者も、相談で気持ちが収まったり学校への理解が深まったりする。保護者の考えを学校側が理解することにもつながっており、両者を『接続』する機能を果たせているようだ」と話す。

◇有意義だが中立性がカギ

 教育紛争の解決法を研究している森部英生・群馬大教育学部教授の話 トラブルが生じたら裁判に訴え、法に基づいて判断してもらう方法もあるが、シロかクロかの対立になる恐れが出てくる。教育は「継続」であることを考えれば、まあまあのところで互いを納得させる方が良い場合もある。第三者によるアドバイスはそうした形につながりやすい。

 保護者からの苦情などが教師に集中すれば、教師の負担はますます増える。負担軽減の点からも(第三者の助言は)有意義だ。

 学校側からも相談できるようにした方がいいと思うが、そのためには第三者機関の中立性を高める必要がある。教員養成の大学などに置くことも一案だ。